【おっさん版フォレスト・ガンプ?】親しい人との確執を持つ人には、だいたい観て欲しい。贖罪のロードムービー。映画『#ハロルド・フライのまさかの旅立ち』@shochiku_youga

ハロルド・フライのまさかの旅立ち/The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry/イギリス映画
監  督:ヘティ・マクドナルド
公開日:2024年6月7日

ハロルド・フライのまさかの旅立ち
(C)Pilgrimage Films Limited and The British Film Institute 2022

私にも息子が一人いる。今は家を出て暮らしているので、彼が使ってた部屋は現在は私のおもちゃ部屋になっている。人から見ればゴミみたいなもんだけど私にとっては大切な宝物だ。決してその宝物のために息子を追い出したのではない、息子も私には大切な宝物だ。私の私見かもしれないけれど最近は少子化のせいか(でもないかもしれんが)あまり子供を外に出さず自宅にずっと住まわせる家庭も多いような気もするし、子供たちも外出暮らす不安な気持ちを少しでも避けたいと思うのか、なかなか旅立つ機会を見逃しているような気がするんだがどうだろう。

おっさん、昔の同僚から手紙を受け取る。
この物語、ハロルドは定年を迎えたどこにでもいそうな手持ち無沙汰なおっさんだ。そんなおっさんの下に昔の同僚から一通の手紙が届く。なにやら余命わずかで今はホスピスで末期医療を受けているらしい。まぁ、手紙をもらったんだから「頑張って治療に励んでください」とありきたりな返事を書いてポストまでその手紙を出しに向かった。それは単に手紙をポストに投函するだけの簡単なミッションだった。
同僚は女性のようで、女性から届いた手紙なのでおっさんの女房は気に食わなかったのか、観てる私にも分かるそっけない態度。。「オイオイ、その年でまだ嫉妬してんのか?」と。まんまと監督の術中にはまったというわけだ。
おっさん、何を思ったのか急に歩き出す。
投函するはずの手紙を手にしながらなかなか投函できずポストを転々とするおっさん。しまいには郵便局もスルーしてガソリンスタンドの小娘にお悩み相談。
まぁ、そのカウンター越しのお小娘がこのおっさんを拐かすんだな。「え?マジ?」「あたしゃ無神論者なんだけど奇跡を起こすのは神だけじゃないのね?」と、そのうえその小娘に一筋の光が差し込んでくるもんで、でもうお膳立てはカンペキ。イギリスの田舎町、遥か遠くを一筋の光が差し込む。彼女に会いに行くことに。しかも800キロ先の病院まで歩いて行くんだと・・・。
女房には「家の車庫までしか歩いた事がないクセに」と怒られるも、自分のためではなく、歩いて会いに行く苦行を入院中の同僚のために行う事で、彼女を救う為に会いに行くというおっさんの思うが伝わるのではないかという感動の幕開けだ!!!
おっさん、有名になる。
行く先々で人に会い助けられる。手を差し伸べてくれたくれた人たちにもそれぞれ事情がある。そしてこの辺りから、語られなかったハロルドの家庭の話に挿入されだす。息子がいるようだがなにやら関係が上手くいってないよう模様。かわいいはずの息子なのに何故か手を差し伸べる事がない幼少時代、有名な大学へ行くも馴染めず自宅で引きこもる姿、ドラッグと酒に溺れる青春時代。病んでる姿に観てるこっちは「こりゃ、この先死ぬな。いや、死んでるな」とは思うが、映画は曖昧な表現をひたるら続け到着まであと3週間!!!、途中であった男性がなにやら有名なブロガーか?!記者なのか、その彼に何を語ったか、おっさんある日一躍有名人に躍り出る。ネットのフォロアーなら邪魔にもならないが、リアルフォロアーがついちゃったもんだから訳もわからず、一緒に歩きだす。いやぁ〜物分かりの良いババァがいて良かったよ。
おっさん、800キロ完歩する。
ついに目的のかの地に到着する。
おっさん、やる夫になる。
旅の途中、ジャニー喜多川氏に会い出会った少年の履いている靴に穴が開いているのを見つけ「ユーの靴穴が開いてるじゃないか!ウチへ来たら新しい靴を買ってあげるよ」と言っていいものかハロルドに相談する。私は相談するまでもないと思ったので何故このエピソードを映画に持ってきたのかイマイチ分からず。終盤ハロルドと同行していた犬が一匹で去っていく。アレは息子が許したということを暗示しているのか?ちょっと分からんなぁ〜。しかし物語の根元は、「やらない後悔をするよりやって後悔せよ」だと思う。若くして息子を失ったハロルドは常にその自責の念と共に旅を続ける。自暴自棄になりビール工場で自分をかばいクビになった闘病中の元仕事仲間、彼女に伝えるべき言葉というのはハロルドの奥さんにしてもそう、誰かに話すことによって何かに押し殺されていた自分の気持ちが表に出てくる人生こそ贖罪の旅とでもいうことか。(S)

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